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歩行分析で見るべきポイント
ヒトが生活する上で、”歩く”という行動は非常に重要です。
そのため、この歩行を評価するということも同様、セラピストにとって重要なスキルと言えるでしょう。
しかし、歩行を評価することを”難しい”と感じている方も多いのも事実です。
それもそのはず、視るべきポイントが多いため”難しい”のです。全てを視ようとするとキリがありません。
しかし、本当にそのポイントを視るべきなのでしょうか?
細かい部分を視るよりも前に、まずは歩行の全体像を把握する方が良いと感じています。
つまり、身体全体を”ボヤッと視る”ということです。
最初から”膝”単体だけを視るのではなく、全体をなんとなく診ることで、『どのように歩いているのか?』を紐解いていくことが大切です。
では、”どこ”を”どのように”視るのが良いのでしょうか?
今回の記事では、胸郭・骨盤・足部の3ポイントに焦点を絞ってまとめていきます。
- 身体全体を”ボヤッと視る”
- 胸郭・骨盤・足部に焦点を絞る
胸郭
胸郭は、胸椎・肋骨・鎖骨・肩甲骨を複合した意味で使われますが、これを全て視るわけではありません。
胸郭は上半身重心が存在する部分であり、第7〜9胸椎レベルにあるため重要なのです。
歩行では、『この上半身重心をいかに効率よく前方に進めることができるか?』というのがポイントです。
つまり、上半身重心の側方移動量が大きい場合、効率の良い歩行ではないということです。
みぞおちの辺りをなんとなく視ておき、その部分に◎が付いているようなイメージを持つと良いです。
この◎が淀みなく進んでいくのか、それとも右側に揺れることが多いのか、左側なのか…、右斜め下方向なのか…といったように、◎の位置を追っていくと良いです。
それを追って診ているうちに、歩行の”このタイミング”で、◎が”この方向”に動くというパターンが視えてくるようになると思います。
あるタイミングで急激に動いている場合、そのまま◎が動き続けるわけではなく、ある箇所・タイミングで止まります。
”動く”ということは、その部位に”加速度”が生じています。
それが”止まる”ということは、そのタイミングで特定の”筋活動”が生じているか、あるいは”構造的な支持による制動”を行なっているということになります。
つまり、そのタイミングでは組織に負担が加わっているということになります。
- 上半身重心(Th7〜9)を視る
- 上半身重心の位置変化を追う
- 側方動揺のタイミングを視る
上半身重心の位置が変われば、腰部・骨盤帯・下肢の関節運動・筋活動にも変化が及び、メカニカルストレスが生じることが考えられます。
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骨盤
骨盤は、脊柱と大腿骨を繋ぐ中間地点であり非常に重要な部分と言えるでしょう。
そのため、この部分の動きを着目することは、歩行を視る上で避けては通れません。
骨盤の動きとして視やすいのが、側方動揺と回旋です。
- 荷重応答期での骨盤側方動揺を視る
- 立脚後期での骨盤回旋を視る
ポイント①
ポイントの1つ目として、歩行の荷重応答期(Loading Response:LR)での骨盤側方動揺です。
先ほども記載しましたが、歩行では『いかに効率よく前方に進めることができるか?』というのがポイントになります。
このことから、側方動揺が生じている場合は効率の良い歩行とは言えません。
骨盤は身体の中でも大きく視やすいため、この部分の動きを追うことは簡単です。
左右どちらに大きく振れるのか、はたまた常に片方に留まっているのかなどを視ると良いでしょう。
ポイント②
ポイントの2つ目としては、歩行の立脚後期(Terminal Stance:TS)での骨盤回旋です。
立脚後期では股関節が伸展し、前方への推進力を生み出す上で非常に大切な局面です。
しかし、骨盤が支持脚側に回旋している場合では、股関節は伸展せず立脚後期が延長し、前方への推進力を生み出すのには適さない状態です。
この場合すぐに蹴り出そうとするため、股関節屈曲や膝外反・足部過回内などの代償により、反対側へ重心を移動させるようになります。
右側の立脚後期で、骨盤が右回旋する場合に上記のことが該当します。左では骨盤左回旋ということです。
『反対側への回旋は良いのか?』という話になるかもしれませんが、それは適切に蹴り出せている可能性が高いので着目しません。
むしろ、『前方へ振り出した側の下肢に問題が生じているかもしれない』と考えた方が良いでしょう。
足部
足部は、地面と身体を繋いでいる重要な部分になります。
地面に対して唯一の接点であり、地面からの反力を受け止めて、それに柔軟に適応している部分となります。
足部において視やすいポイントは、蹴り出し時の足底の見え方と、”toe-in”あるいは”toe-out”になります。
- 遊脚前期での足底を視る
- 立脚中期〜後期のtoe-in・toe-outを視る
ポイント①
ポイントの1つ目としては、遊脚前期(Pre-Swing)での足底の見える量です。
セラピストが歩行を後ろから観察し、つま先が床から離れるタイミングで『足底がどれくらい見えるのか?』ということになります。
足底がしっかりと見えるようであれば、蹴り出しもスムーズに行えていると考えられます。
しかし、そこまで見えない場合、蹴り出しの推進力としては不十分であるため、様々な代償により下肢を振り出していると考えられます。
患者間・クライアント間で比較するよりも、その方の左右差を比較する方が良いでしょう。
ポイント②
ポイントの2つ目としては、立脚中期〜後期の”toe-in”・”toe-out”です。
toe-in・toe-outとは、『つま先の向きが内側を向いているのか、あるいは外側を向いているのか』ということです。
本来つま先の向きは真正面ではなく約8-10度外転しているため、基準の向きを間違えないように注意しましょう。
真正面を向いている場合は”toe-in”であるということです。
この場合、母趾の荷重が減少し小趾側に荷重移動するため、適切な蹴り出しを行えません。
反対に外側を向いている場合は”toe-out”であり、これは母趾球にかかる負担が増える傾向にあります。
指先まで荷重がかからず、母趾球で荷重が終わってしまうため、この場合も適切な蹴り出しを行えません。
ただし、つま先の向きは、足部・下腿・大腿骨・寛骨臼の位置・方向(いわゆるアライメント)が関与する部分になります。
患者間・クライアント間で比較するより、その方の左右差や歩行での変化を評価すると良いでしょう。
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まとめ
歩行において、まず最初に視るべきポイントを胸郭・骨盤・足部に分けてまとめました。
それぞれ視るポイントに関しては、以下の要素が含まれています。
- 胸郭:前額面上の動き
- 骨盤:前額面・水平面上の動き
- 足部:矢状面・水平面上の動き
3平面上の動きを網羅することができますので、歩行の全体像を把握するには良いポイントだと考えています。
歩行は前に進むことになりますので、矢状面上の動きになります。
ここに前額面や水平面上の余分な動作が加わることが、身体にとってストレスでありスムーズな歩行には繋がりません。
上記のポイントで視る他に、余裕があれば『歩幅やリズム』などにも注意を向けると良い評価ができると考えます。
コメント
[…] 歩行の全体像を把握するために視るべきポイント歩行分析を行う際に視るべきポイントを、胸郭・骨盤・足部に分けて解説しています。歩きを見ることに苦手意識をお持ちの方も多いの […]