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Scapula Dyskinesiaの評価方法
『肩甲骨の運動異常=Scapula Dyskinesia(スキャプラ ジスキネジア)』に関する記事です。
今回が第3弾となりますが、肩関節周囲の疼痛に対して肩甲骨の運動異常(Scapula Dyskinesia)が疑われる際の評価方法をご紹介していきます。
よく一般的に「肩甲骨の動きが悪い」「肩甲骨が硬い」と言ったことがある、そのように思い込んでいるという方は多いかと思いますが、本当にそうなのでしょうか?
今一度、肩甲骨について考える良い機会になればと思っています!
こちらの記事でそれぞれ、”①肩甲骨の解剖学と運動学・機能”の内容と、”②肩関節・頸部・姿勢と肩甲骨の関連”をご紹介していますので併せてご参照ください!
こちらが参考文献になりますので、ぜひご興味ある方はこちらの記事をご覧ください!
Scapula dyskinesia, the forgotten culprit of shoulder pain and how to rehabilitate:Andreas Christos Panagiotopoulos, Ian Martyn Crowther, SICOT-J, 2019
臨床的評価
肩甲骨の臨床的評価は3段階に区分されます。
- 視診・動作の観察
- スペシャルテスト
- 周囲の構造の評価
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視診・動作の観察
肩甲骨の直接観察を行うために、まず患者の肩甲骨の安静肢位を評価します。
続いて、肩関節屈曲・外転などの自動運動を観察し、それを評価します。
その後、1kgの重りを持って立ち、挙上・外転などの単純な自動運動を行ってもらいます。
その際の注意点を以下にまとめます。
- winging
- 肩甲骨の早期挙上
- 急速な下方回旋
- Shruggingを観察
スペシャルテスト
Scapular Dyskinesiaが疑われる際のスペシャルテストでは、徒手的にアシストされた肩甲骨の動きを行ないます。
Scapular Assistance Test(SAT)とScapular Reposition(Retraction)Test(SRT)と言われる2種類の評価を行います。
肩甲骨の動きを補助するように行いますので、名前は知らなくても普段何気なく行なっている方々もいるのではないでしょうか?
1つ目のSATが肩関節挙上時に肩甲骨上方回旋の動きをサポートするテストで、2つ目のSRTが肩甲骨を安定させることで肩関節周囲筋の出力が改善されるかを評価するテストです。
では、細かい内容をご紹介していきます!
①Scapular Assistance Test(SAT)
症状のある側の上肢を外転挙上する際に、肩甲骨の上方回旋をサポートすることで、肩関節にかかる負担を軽減する狙いがあります。
肩甲骨の動きが円滑化することで、症状が緩和することがあります。
- 患者が上腕骨を外転挙上する時に、検査者が肩甲骨の下内側縁を外側および上方への動きをサポートします
- このテストでは、痛みを感じる程度や範囲の違いを評価します
- このテストが陽性だと疼痛は減少します
painful arcやSISを伴う患者では通常陽性になります - 無症候性の患者には偽陽性はありません
※SIS:Subacromial Impingement Syndrome(肩峰下インピンジメント症候群)
個々で肩甲骨の動きには違いがありますので、片側の症状の場合は健側の肩甲骨の動きを参考にして、評価すると良いかもしれません。
②Scapular Reposition(Retraction)Test(SRT)
肩甲骨を安定させた上で、肩関節挙上の等尺性収縮を行ってもらいます。
Empty Can Testの肢位で行うため、疼痛が強い場合は注意が必要です。
肩甲骨を安定させた位置で筋の収縮を行わせることで、一時的に筋活動・発火・モーターコントロールを改善することができ、疼痛が軽減することがあります。
- 検査者は片方の手で鎖骨・肩甲骨内側縁を把持して安定させます
- もう一方の手で、患側上肢に対する抵抗を加えます
- 患者は、肩関節挙上・内旋位にて、挙上方向へ力を加えます
- この操作で患者が感じる痛みが軽減されると、このテストは陽性になります
- このテストは、腕の等尺性挙上中に患者の筋力が増加した場合も陽性となります
SRTは、Scapula Dyskinesiaだけでなく、腱板損傷において十分な感度・特異度・尤度比を示します。
Sensitivity | Specificity | LR+ | LR- |
---|---|---|---|
81.7 | 80.8 | 4.25 | 0.23 |
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周囲の構造の評価
機能的関節として、肩甲骨は肩甲胸郭関節を構成しています。
肩甲骨は肋骨上を滑るように動きますので、肋骨のアライメントや可動性も大きく関与しています。また、肋骨は胸椎と関節を構成しているため、胸椎のアライメントや可動性にも影響されます。
これらを踏まえると、”本当に肩甲骨の問題だけなのか?”は胸椎や肋骨の評価をしないと明確にならないということです。
そして、胸椎は腰椎の影響も受け、その腰椎は骨盤帯・股関節の影響を受けます。スポーツをされている方においては、このことを無視できません。長時間座って仕事をしている方も、骨盤・股関節の影響を受けますので、複合的に評価していく必要があります。
肩甲骨
⇅
胸郭(肋骨・胸椎)
⇅
腰椎
⇅
骨盤帯・股関節
こちらの記事では、胸郭の評価方法をご紹介していますので、併せてご参照ください!
さらに、軟部組織モビリティの問題か、あるいは筋活動の問題(モーターコントロール)かを特定する必要があります。
大まかに区分すると、Passiveで可動性の制限がある場合は軟部組織のモビリティの問題であると考えられ、Passiveは問題なくてもActiveでの可動性に問題が生じる場合はモーターコントロールの問題があると考えられます。
ただし、姿勢・重心位置・重力の影響も加味して評価していくことが必要になるので、注意深く考慮していく必要があります。
まとめ
Scapula Dyskinesiaの評価方法としては、視診・触診・スペシャルテスト・肩甲骨に影響を与える構造の評価をしていきましょう。
肩甲骨の評価としては、まず直接的観察が用いられますが、これを評価していくのは非常に難しいと感じています。肩甲骨をの触り方や、触る時の圧のかけすぎには十分注意する必要があります。また、人によって見方が違う場合もありますので、一人職場でない方は周りの方とディスカッションすることをオススメします。
ご紹介させていただいたSATやSRTなどは、慣れていない方でも結果が出やすいのでぜひお試しください!
こちらの記事でそれぞれ、”①肩甲骨の解剖学と運動学・機能”の内容と、”②肩関節・頸部・姿勢と肩甲骨の関連”をご紹介していますので併せてご参照ください!
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参考文献
- Scapula dyskinesia, the forgotten culprit of shoulder pain and how to rehabilitate:Andreas Christos Panagiotopoulos, Ian Martyn Crowther, SICOT-J, 2019
- Khazzam M, Gates ST, Tisano BK, Kukowski N. Diagnostic Accuracy of the Scapular Retraction Test in Assessing the Status of the Rotator Cuff. Orthopaedic journal of sports medicine. 2018
コメント
[…] Scapula Dyskinesiaの評価方法と治療の手順肩甲骨の運動異常・Scapula Dyskinesia(スキャプラ ジスキネジア)とはなに?肩甲骨・肩甲上腕リズムの評価方法、肩甲骨の動きやwinging翼状肩甲骨、 […]
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