内臓からの関連痛:後腹膜領域と消化器系の症状まとめ

後腹膜領域と消化器系の症状のトップ画像 病態

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後腹膜領域

腎臓・尿路(尿管と膀胱)・前立腺は、後腹膜領域に位置しており、腹膜によって消化器官から分離されています。

これらの臓器は、胸部下部から腰部、骨盤部のどの部分においても関連痛を引き起こす可能性があります。また、脇腹周囲を中心に下腹部、性器、大腿部の前部と内側にも痛みを引き起こす可能性があります。

膀胱または腎臓の感染症は、排尿時の痛み・頻尿・尿意切迫・血尿・発熱や悪寒・腰痛などの症状を示すことがあります。

症状まとめ

  • 排尿時痛
  • 頻尿
  • 尿意切迫
  • 血尿
  • 発熱・悪寒
  • 腰痛

腎結石は、腎・泌尿器系の臓器が関連痛を引き起こす多くの部位に激しい痙攣性の痛みを生じさせます。非特異的な鈍痛を引き起こすこともあり、ほとんどは無症状であることが多いです。

慢性腎臓病(腎不全)は、骨へのカルシウム沈着が不十分になることで骨の構造的な弱さをもたらすなど、さまざまな骨格異常と関連しています。

前立腺の疾患は、重症または十分に進行していない限り、症状はほとんど生じないことが多いです。前立腺に関しては、下記にて詳しくご紹介します。

前立腺

前立腺疾患の症状はわずかなもので、腰部中央や仙骨部分の痛みが生じます。

前立腺の感染症には、急性または慢性のものがあり、細菌性または非細菌性のものがあります。
前立腺の無菌性炎症や前立腺の鬱血の症状は、しつこい腰痛や仙骨痛を引き起こす場合もあります。これらの疾患は年齢に関係なく男性に多く、腰痛や仙骨痛が明らかに機械的な筋骨格機能不全なものでない場合には考慮する必要があります。

前立腺がんは、頻尿・夜間排尿・尿流が出にくい・尿流が弱くなるなどの閉塞性の症状を示すことがあります。

症状まとめ

  • 腰部痛・仙骨部痛
  • 頻尿
  • 夜間排尿
  • 尿流が出にくい
  • 尿流が弱くなる

前立腺は加齢とともに肥大する(前立腺肥大症)ため、これらの症状は高齢男性に多くみられます。前立腺のがんは通常、前立腺内で増殖し、前立腺の容量を超えて拡大するまでに何年もかかります。腫瘍が局所の脊髄神経や腰椎の骨の部分に直接広がることもあり、腰痛が生じることもあります。

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消化器系

消化管は喉から直腸までの体幹のどこにでも痛みを引き起こす可能性がありますが、消化器系の症状なしに痛みを引き起こすことはほとんどありません。

消化器系の症状には、痛みと食事の関係・痛みを伴う排便・消化不良・吐き気・食欲不振・嚥下困難・排便習慣の変化・血便・黄疸・体重減少などがあります。

症状まとめ

  • 痛みと食事の関係
  • 痛みを伴う排便
  • 消化不良
  • 吐き気
  • 食欲不振
  • 嚥下困難
  • 排便習慣の変化
  • 血便
  • 黄疸
  • 体重減少

消化性潰瘍や食道炎では、上腹部や中腹部・中背部・前胸部・頸部に痛みを感じることがあります。痛みは食事によって緩和されたり、食後に悪化したりします。
喫煙・アルコール・非ステロイド系抗炎症剤・カフェインは、これらの条件のリスクを高める可能性があり、非ステロイド系抗炎症剤の使用は、それらの初期の症状を隠す可能性があります。

胃がん、肝臓がん、膵臓がん、胆嚢がんは50歳以上の男女に発生し、胃腸症状が顕著になる前に上腹部または背中の深く、かじるような、びまん性の痛みによって示される場合があります。これらの症状には、消化不良・原因不明の体重減少・倦怠感が含まれます。

肝臓・食道・胃・膵臓の疾患は、横隔膜の炎症を引き起こして、症状を頸部および肩の領域に波及させることがあります。

腕を動かした時に肩を痛がる男性

胆嚢疾患、特に炎症(胆嚢炎)および結石(胆石症)は、右肩甲骨領域に関与した肋骨下部レベルにおける再発性の右胸部痛を示す可能性があります。

患者は食後に右上腹部痛を経験する可能性がありますが、食物の摂取と疼痛との間に明確な関係がないことや、脂肪分の多いものや脂っこいものを食べると症状が悪化することもあります。40歳以上の肥満女性は胆嚢疾患の可能性が高いことも念頭に置いておくと良いでしょう。

まとめ

男性では、前立腺の問題を抱えているケースが少なからずいるのではないかと考えます。

個人的な体験談としては、泌尿器系の問題を抱えたとき、仙骨部痛と左腰部痛が常に重たく鈍痛が生じていたこともあります。これは特に姿勢や動作に依存することはなかったため、内臓からの関連痛だと感じました。腰部脊柱起立筋は膨隆しており、常に緊張している状態だったのを覚えています。(今現在は、スッキリ何もありませんのでご安心を。)

これまでの臨床経験では、逆流性食道炎を抱えているor抱えていた患者さんでは、頸部痛に困っているケースもありました。呼吸および横隔膜の機能不全も生じていたため、内科系疾患は筋骨格機能不全と関係していることを感じています。

これらの情報を完璧に知っていないといけない訳ではありません。ある程度知っておいて、普段は頭の片隅に置きながら、少し引っかかった時に再度調べるくらいがちょうど良いのではないでしょうか。

もちろん覚えておくことに越したことはないと思います!

内臓からの関連痛のメカニズムと、内臓ごとの関連痛の領域に関しては、こちらの記事をご参照ください。

内臓からの関連痛が疑われる際の、問診や触診の評価方法のポイントに関しては、こちらの記事をご参照ください!

こちらの記事では、骨盤内疾患に関する関連痛と症状をまとめています!

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参考文献

Pathological Origins of Trunk and Neck Pain: PartI Pelvic and Abdominal Visceral Disorders:WILLIAM G. BOISSONNAULT, CHARLES BASS, MD, JOSPT, 1990

コメント

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