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スクワットの指導
スクワットは、”King of Exercise(キングオブエクササイズ)”といわれるほど多くの筋肉を動員するエクササイズであり、知らない方はほとんどいないでしょう。
しかし、適切なフォームで実施できる人は少なく、また適切な運動指導を行える理学療法士はそう多くはいないように思います。
それは、『フォームの不適切なポイントがわからない』『スクワットを行うことの利点がわからない』『実際にご自身で動かせない・動いていない』ということが要因と考えられます。
スクワットは、下肢・体幹の多関節筋(Grobal muscle・アウターマッスル)および単関節筋(Local muscle・インナーマッスル)を動員し、関節の位置関係や重心位置を調整するモータコントロール(運動制御)や、床反力を応用し下肢・体幹の連動を学習することにおいて非常に重要な運動になります。
スクワットの正しいフォームなどに関して記載されている記事は多くありますが、運動指導をする方に向けた記事は少ないように思います。そのため、スクワッットを指導するにあたって重要なポイントを、解剖学・生理学・運動学をもとにまとめていきます!
スクワットの動き
スクワットの動きは、脚屈曲動作と脚伸展動作の組み合わせで行われています。
→股関節屈曲+膝関節屈曲+足関節背屈
→股関節伸展+膝関節伸展+足関節底屈
これらの動きは、矢状面での動きになります。
動作をスムーズに行うためには、股関節外旋・脛骨内旋・後足部回外・前足部回内などの前額面・水平面上の動きが重要なポイントになります。
では、これらの動きを細かく解説していきます!
脊柱
下肢の動きに入る前に、まずは脊柱をみていきましょう。
”腰椎が屈曲しているスクワット”は、一目見てダメだ!と感じると思います。
腰椎屈曲が適切でないのは、L4/5やL5/S1における剪断ストレスが生じてしまい、関節周囲の静的支持機構にかかる負担が増大することが理由の一つになります。
その他には、腹圧(IAP:Intra Abdominal-Pressure)がかからないために、下肢の筋出力低下に影響してくることも考えられます。腰椎過伸展においては、L4/5やL5/S1の椎間関節にかかる負担が増大するため適切ではありません。
そこで、胸郭が重要となります。
脊柱全体として伸展を保持するためには、胸椎・胸郭での伸展が必要な要素となります。
股関節
股関節で屈曲・伸展の動きを適切にコントロールするためには、股関節屈曲位における股関節内旋・外旋の動きが重要になります。
スクワットで下降していくときには、股関節外旋の動きが伴います。
そのため、『外旋可動性だけで十分!』『なぜ内旋可動性が必要なの?』と思われるかもしれません。
しかし、内旋可動性がないと、股関節周囲筋群(特に深層外旋筋群)の固有受容感覚は乏しく、股関節外旋位でのコントロールが十分に行えない可能性があります。
膝関節
膝関節においても屈曲・伸展の動きが主になります。
しかし、この動きだけでは不十分です。
それは、スクワット下降時は股関節屈曲に合わせて股関節外旋の動きが加わってくるため、相対的に脛骨は内旋する必要性があります。
脛骨内旋はわずかな動きにはなりますが、非常に重要なポイントとなります。
足関節・足部
足関節では背屈可動性が重要になります。
これに併せて、後足部回外と前足部回内が必要となります。
それは、足部縦アーチ・横アーチの保持による足部の安定性が、床反力の恩恵を受けるためには必要になるためです。
スクワット動作における足関節の動きは、荷重位での背屈+後足部回外位での背屈が重要です。
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注意するべきポイント
上記の身体各部位の動きを踏まえて、スクワット動作においてどのようなポイントに注意していくべきなのかをまとめます!
- 脊柱の伸展位保持
- 股関節のヒンジ動作
- 重心の前方シフトおよび過度な後方シフトがない
- 膝関節外反がない
- 後足部・中足部の過回内がない
- 脊柱回旋の左右差
- 骨盤帯回旋の左右差
これらが、スクワット動作において注意するポイントになります。
動作中に様々な代償が生じると思いますが、『なぜ生じてしまうのか?』という点に着目し、代表的なよくある例をご紹介していきます。
腰椎屈曲
腰椎屈曲動作は、L4/5やL5/S1における剪断ストレスが生じてしまい、関節周囲の静的支持機構にかかる負担が増大するため、怪我のリスクが高くなります。
腰椎屈曲が生じてしまう大きな要因として、骨盤前傾・股関節屈曲動作が適切に行えないことが考えられます。
股関節屈曲の可動性に制限がある場合、動作の途中から骨盤前傾の動きが行えず、骨盤後傾位となってしまうために腰椎は屈曲してしまいます。
そのため、大腿骨が床と水平までスクワット(パラレルスクワット)を行うためには、股関節屈曲120度は確保する必要があります。
股関節屈曲可動性に問題がないのに、骨盤前傾動作ができない場合、モーターコントロールの問題が考えられます。
つまり、骨盤を前傾させる動きが、『立位』ではできないということになります。
四つ這い位や膝立ち位(Kneeling)の肢位では、骨盤前傾動作をできる可能性がありますが、確認が必要になるでしょう!
その他には、胸郭伸展位保持ができないこと、腹圧を保つことができないことが考えられます。
胸郭を伸展位で保持するための、胸部起立筋群の機能不全がある可能性があります。
そして、腹圧をかけることができない場合でも、胸郭は屈曲してしまうことが考えられます。
かなり細かい話になりますが、脛骨内旋も重要なポイントとなります。
脛骨内旋の可動性が制限された場合、相対的に大腿骨は外旋できないため、股関節は内旋してしまいます。
股関節が内旋してしまうと、股関節屈曲時に前面でのつまり感が生じてしまいます。
そのため、股関節屈曲が行えず、骨盤は後傾し、腰椎も屈曲してしまうことが考えられます。
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腰椎過伸展
腰椎が過伸展してしまう場合も、胸郭と腹圧の関係によるものが考えられます。
胸部起立筋群の機能不全を腰部起立筋群で代償するために、腰椎が過伸展してしまう可能性があります。
また、腰椎過伸展させることで、股関節を支点とするモーメントアームの距離を減らし、負荷を軽減させている可能性もあります。
どちらにせよ、腹圧をかけずに動作を行なっている、腹圧をかけにくい肢位になっています。
膝関節屈曲
膝関節屈曲の動きが大きくなってしまうのは、股関節屈曲の動作が行えず、重心の後方シフトが生じないことが要因と考えられます。
よく言われるのは、『つま先よりも前に膝を出してはいけない!』ということです。
これは、ケースバイケースだと考えます。
それは、股関節屈曲動作と膝関節屈曲動作を行うタイミングの問題だからです。
股関節屈曲よりも先に膝関節が屈曲してしまうと、必然と膝関節優位のスクワットになり、膝関節には剪断ストレスが加わります。この場合の膝が前に出ている状態は、許容できるものではありません。
しかし、股関節屈曲動作が適切に行われた後、または同時に膝関節が屈曲し始めれば、自然と良いフォームでスクワットを行えるでしょう。
ある程度の深さまでスクワットを行なったとき、膝はつま先よりも前に位置することになりますが、これは許容範囲内の『つま先よりも膝が前に出ている状態』です。
股関節屈曲動作の後、またはほぼ同時のタイミングで膝関節が屈曲することが重要です。
そうすることで、大腿四頭筋だけでなく、大殿筋やハムストリングスを動員することができるフォームとなります。
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膝関節外反
膝関節外反の動きは、股関節を外旋位で保持することができないことや、後足部が回内することで生じてしまいます。
膝が外反してしまうと、内側支持機構には多大なストレスが生じ、怪我のリスクを高めます。
そのため、足幅と同じ程度、膝関節の間隔を開くと良いでしょう!
股関節を外旋位で保持するための、深層外旋筋群の機能不全がある可能性があります。
その場合、股関節が内旋してしまうために、膝関節は外反してしまいます。
後足部は回外位であると、足部剛性は保たれ、床反力の恩恵をしっかりと受けることができます。
しかし、既に扁平足で足部内在筋の機能不全がある場合には、後足部が過回内してしまい、内側荷重となるために、膝関節は外反してしまいます。
足部過回内
足部は、後足部回外・前足部回内によって安定性が確保されます。
足部が過回内してしまう要因として、足部内在筋や母趾の機能が大きく関係しています。
日常的に行われる歩行を例にすると、内側縦アーチを潰すような立脚で、内側荷重が強いまま蹴り出しを行うような場合です。
この場合、常に内側荷重を行なっているために、スクワットの動作においても同様に足部は過回内を生じてしまう可能性があります。
その他には、足幅やつま先の向きの設定を誤っている可能性もあります。
人それぞれの身体にあったスタンスにすると、足部の機能を最大限に活かせることでしょう。
後足部回外・前足部回内で保持する、足部内在筋の機能不全がある可能性があります。
また、母趾の屈曲可動性も関与してきます。
足幅は肩幅より0.5〜1足分広くとり、つま先は10~30度ほど開くと良いでしょう。
(※足幅や角度は個人差があります)
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まとめ
スクワットを運動指導するにあたって、注意するポイントをご紹介させていただきました。
上記で紹介してきた代償動作に関しては、要因となる部分は『可能性がある』くらいに留めておき、実際に対象となる方をしっかりと見る必要があります。
自重で行う際の手の位置に関しては様々なパターンがあります。そのため、基本的にはどこでも大丈夫ですが、初めは骨盤に当てておいた方が股関節屈曲の動作をフィードバックしやすいと感じます。
また、スクワットを安定したフォームで行えない場合は、『デッドリフト』から始めると良い反応が得られるかもしれません。デッドリフトのフォームに関しては、こちらの記事をご参照ください。
コメント
[…] スクワットの運動指導で注意するべき5つの代償動作多くの方がご存知のエクササイズである『スクワット』。今回は、正しいフォームに関して、運動指導する側の視点で書いている内容 […]
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