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なぜ腰椎が伸展してしまうのか?
今回の記事では、臨床上問題となりやすい『腰椎の伸展』に焦点を当ててをまとめていきます。
多くの書籍などでは、伸展時・後屈時の腰痛は椎間関節・関節包・多裂筋・腰部起立筋などの問題で生じていると解説されています。
しかし、臨床で必要となる知識としては、伸展時の痛みの原因組織を鑑別するだけではなく、『なぜ腰椎が伸展してしまうのか?』という部分が重要となります。
たとえ、痛みの原因がわかったとしても、痛みを引き起こしている原因がわからなければ、痛みを軽減させるだけの対処療法でしかありません。
つまり、腰椎を伸展させてしまう原因を把握し、それに介入していく必要があります。
そこで、今回の記事では、腰椎が伸展してしまう5つの原因について解説していきます。
- 腰椎の不安定性
- 胸郭の可動性制限
- 股関節伸展・回旋の可動性制限
- 足関節背屈の可動性制限
- 呼吸の機能不全
腰椎の不安定性
まず多くの方が考えるのが、腰椎の不安定性です。
いわゆる”コア”が安定していない場合、腰椎が安定しない状態となります。
しかし、なぜ腰椎が不安定だと伸展してしまうのでしょうか?
腰椎の椎間関節は、伸展動作時に下位椎体に対して上位椎体が後方に滑り、関節は閉じた状態(Close-Packed Position)になります。
つまり、腰椎を伸展させることで、椎間関節を閉じた位置にして、筋を使用しなくても安定させることができる肢位を選択しているということになります。
腰を沿っている方に対して、「腰を反らないように!」と声かけをしても修正されないことが多いと思います。それは、身体が代償として腰を沿っているからだと考えられます。
腰椎を安定させるためには、横隔膜や腹横筋・内腹斜筋、多裂筋、骨盤底筋など腹腔内圧(IAP:Intra-abdominal Pressure)に関係する筋の活動が必要となります。また、LPHC(Lumbar-Pelvic-Hip Complex:腰椎骨盤股関節複合体)としても機能も大切となります。
このどこか一部分に問題が生じてしまう場合、腰椎が不安定な状況に置かれてしまい、それに伴い他の部分の機能も低下してしまうことで、さらに腰椎は不安定な状況となります。つまり、どこかの部分に機能不全が生じてしまうと、連鎖的にあらゆる機能が低下してしまう悪循環になります。
これに関する詳しい内容は、こちらの記事をご参照ください。
ただし、いきなり腰椎が不安定になるということは考えられにくいので、腰椎を過度に動かしてしまう姿勢や動作が問題となっていることが多いです。
胸郭や股関節・足関節などの可動性の問題が、腰椎を可動させてしまうことに繋がっているということです。
以下の内容ではこれを深掘りしていきます。
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胸郭の機能不全
脊柱として見た時に、腰椎の上位には胸椎があります。
胸椎は肋骨と関節を構成しています。前面にある胸骨と、胸椎・肋骨を複合したのが”胸郭”です。
腰椎は屈曲・伸展の可動範囲は大きいものの、回旋の可動範囲は狭いです。それと比較して、胸郭は屈曲・伸展・回旋全ての方向へ3次元的に動きます。
つまり、胸郭の回旋可動性に制限が生じてしまうと、それを代償しようとして腰椎を回旋させてしまうことが考えられます。
胸郭の回旋・伸展
腰椎の右回旋を例にしますと、下位椎体に対して上位椎体の右の椎間関節面は後方に滑り、左の椎間関節面は前方に滑ります。
- 右椎間関節:後方滑り
- 左椎間関節:前方滑り
腰椎が回旋すると、同側の椎間関節は閉じた状態になりますので、片側の腰椎椎間関節に負担が生じることになります。
そして、胸郭の回旋可動性が制限されいるということは、胸椎椎間関節においても後方滑りが制限されているということが考えられます。
回旋は椎間関節の片側だけの問題ですが、両側合わされば伸展の動きと同じ両側椎間関節の問題になります。両側の後方滑りの可動性が制限されているということは、胸郭の伸展可動性が制限されてしまうということです。
このように、胸椎が伸展できなければ、代償しようとして腰椎を伸展させることが考えられます。
仙骨・寛骨・股関節の機能不全
腰椎の下位には仙骨・寛骨・股関節が存在しています。
仙骨・寛骨が前傾してしまうと、腰椎も伸展してしまいます。そして、股関節にも影響を及ぼします。
これに関しては、反対のことも考えられます。股関節に問題が生じることで、仙骨・寛骨が前傾し、腰椎が伸展してしまうということです。
腰椎伸展
⇅
仙骨前傾
⇅
寛骨前傾
⇅
股関節伸展制限
股関節の伸展
先ほども述べたように、股関節の伸展可動性に問題が生じている場合、腰椎伸展・骨盤前傾で代償することが考えられます。
この場合、腰椎が伸展してしまうのは”代償”の結果です。
では、股関節伸展の可動性を出すために、大腿前面・外側面の筋をストレッチしたら良いのでしょうか?
大腿直筋や大腿筋膜張筋、腸腰筋などが制限因子として考えられますが、これらの筋は腰椎・寛骨に付着しています。筋の伸張性に問題があると考えるのであれば、股関節伸展の可動性制限=股関節が屈曲位=寛骨が前傾している、というようにも考えられます。
つまり、寛骨の前傾にも問題があるのではないかと考えられます。
そのため、いきなり筋のストレッチをするのではなく、寛骨を前傾させてしまう腰部起立筋群・腰方形筋、寛骨を後傾させるハムストリングや腹横筋・内腹斜筋などの機能評価を行うべきなのではないかと考えます。
この思考・評価の過程がなければ、軟部組織を傷めつけている可能性すらもあります。
代償しているのにも、何らかの理由があると考えられます。身体にとって何かしらのメリットがあるからそうさせているのであって、それをいきなり奪ってしまうのは、もしかしたら相手の身体を悪くしているかもしれませんね。
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足関節の機能不全
次に、足関節背屈可動性の機能不全です。
足関節が背屈できないというのは、足関節が底屈しているということになります。
足関節が底屈しているいうことは、重心が後方に位置すると考えられるかもしれませんが、実際は前方重心である可能性が高いです。この状態では、重心が踵にのらず、下腿後面の筋を持続的に収縮させることで足関節が底屈していると考えられます。
前方重心の場合、膝を屈曲させて代償するか、股関節を過伸展させて代償する&/or腰椎過伸展で代償することとなります。代償する部分は様々ですが、それぞれの部位で何かしらの問題が発生することが考えられます。
かなり話が飛んでしまい過大解釈とも考えられますが、これらとまとめると、足関節背屈の問題が生じている場合、腰椎を伸展してしまうということも考えられます。
これには足部の安定性なども影響されますので、それらも複合的に考慮する必要があります。
呼吸の機能不全
最後に呼吸の機能不全です。
多くの方が『腹式呼吸』といわれた際に思い出すのは、お腹を前に膨らませた呼吸だと思います。
しかし、お腹が前に膨らむということは、腰椎が伸展してしまうことに繋がります。
これでは適切な呼吸とは言えません。お腹に空気を入れるとしたら、お腹を360°・八方向均等に膨らませるのが理想です。
そもそも、根本的なイメージが違うのかもしれません。お腹に風船が入っているようなイメージを持っていただけると良いかもしれません。
お腹に空気を入れるのは良いことのなのか?
お腹に空気が入れば横隔膜や腹筋群、骨盤底筋などが同時に活動し、腰椎を固定し安定化に寄与します。
しかし、日常生活を送る上で、そこまで固める必要があるのでしょうか?
もしかしたら多くの場面では、固めることを必要としないかもしれません。それは、真っ直ぐの姿勢で活動している場面が非常に少なく、固めるだけではそこから屈曲・伸展・回旋などの動きを行えないからです。
そのため、腹式呼吸だけで生活するのではなく、胸式呼吸も行えるようにトレーニングする必要があります。
腹式呼吸・胸式呼吸
空気を取り込むのは”肺”になります。
肺は胸郭内に存在していますので、息を吸った時には胸が膨らみ、息を吐く時は胸が萎むのは当然のことです。
この胸式呼吸ができないために、仕方なくお腹の前だけを上下させて呼吸しているのかもしれません。
適切に行えていない方は意外と多いと思いますので、ぜひ今一度チェックして見てはいかがでしょうか。
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まとめ
今回の記事では、腰椎が伸展してしまう理由に関して5つのポイントに絞って解説いたしました。
これ以外にも多くの要素が関係しているとは思いますが、非常に長くなってしまうので、ここで一度締めたいと思います。
最初にも言いましたが、腰を反って痛い場合に『何が痛いのか?』も大切ですが、『何で痛いのか?』を探していくことが臨床では非常に大切です。
腰を反った時の痛みが、腰椎椎間関節で生じているのか、あるいは筋・筋膜の問題なのか、に関してはこちらの記事で解説していますので、ぜひご参照ください。
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