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脊柱起立筋と胸腰筋膜の関係
胸腰筋膜の機能解剖の最終第8弾です!
今回は、胸腰筋膜と脊柱起立筋・上肢筋・下肢筋との関係と、胸腰筋膜後葉と広背筋・大殿筋との関係をご紹介していきます。
傍脊椎筋は、厚壁の結合組織区画と傍脊椎の支帯膜状構造(Paraspinal Retinacular Sheath:PRS)内に閉じ込められています。
この後者の構造は横突起先端に到達するため、傍脊椎筋の外縁周囲に前内側に続く胸腰筋膜の深層膜の拡張から形成されます。
傍脊椎筋の収縮は、PRS内の区画内圧を増加させる可能性があります。
脊柱起立筋の活発な収縮において、胸腰筋膜は筋の半径方向の拡張(膨隆)を制御することにより、軸方向のストレスを増加させます。
胸腰筋膜内の脊柱起立筋の半径方向の拡張制限により、収縮中に生成される軸方向ストレスが、最大約30%増加する可能性があります。
脊柱起立筋と多裂筋
脊柱起立筋と多裂筋の働きは、姿勢に依存します。
腰椎前弯の増加:脊柱起立筋と多裂筋と腱膜の伸筋レバーアームが強調される
胸椎後弯の増加:脊柱起立筋と多裂筋の両方のレバーアームの長さを短くする
しかし、腰椎屈曲位では胸腰筋膜の張力を増加させます。
荷重伝達における脊柱起立筋と多裂筋の役割をまとめます。
外側縫線と棘間靭帯の間において、深層膜は脊柱起立筋と多裂筋を囲みます。
脊柱起立筋・多裂筋の収縮は、深層膜の張力が縦方向に増加し、胸腰筋膜後葉全体が膨隆します。
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上肢筋と胸腰筋膜の関係
胸腰筋膜に影響を与える上肢筋は、広背筋と僧帽筋になります。
広背筋は腰部全体に広く分布しており、L4/5とS1/2レベルの間で生じる牽引力から、胸腰筋膜後葉の表層膜の変位によって反対側まで力発揮が伝播します。
僧帽筋は胸腰筋膜への付着が小さく、牽引力も比較的小さな効果をもたらします。
僧帽筋の胸腰筋膜への直接的な関与は少ないですが、僧帽筋中部・下部線維は間接的に関与していると考えています。
僧帽筋中部・下部線維の機能不全が生じると、肩甲骨内転作用が適切に行えず外転位になってしまい、胸椎は後弯しやすくなります。
そのため、胸椎には屈曲モーメントが増加するため、これに抵抗しようとして脊柱起立筋群の過緊張を発生させてしまうことが考えられます。
こうなると、胸腰筋膜に対するストレスが増加したり、区画内圧が増加することで、姿勢や動作に影響を及ぼす可能性があります。
下肢筋と胸腰筋膜の関係
胸腰筋膜に影響を与える下肢筋は、大殿筋と大腿二頭筋になります。
大殿筋への牽引力は、正中線を越えて反対側への変位を引き起こします。
外側への大腿二頭筋への牽引により、深層膜の変位がL5/S1レベルで生じました。
反対に、内側への大腿二頭筋への牽引では、正中仙骨稜までの深層膜の同側変位を示しました。
つまり、大腿二頭筋は外側広筋や腸脛靭帯と密接に関わっているため、これらの組織間において機能不全が生じている場合、様々な姿勢や動作において大腿二頭筋が外側方向へ牽引される可能性があります。
これは、半腱様筋・半膜様筋との間の関係によっても、姿勢・動作に伴う筋収縮によって、大腿二頭筋に牽引力が生じる可能性があります。
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上肢・下肢との連結
同側の大殿筋と反対側の広背筋の両方によって、胸腰筋膜後葉に張力をかけます。
広背筋や大殿筋は、特に下位腰椎と反対側仙腸関節にも効果を発揮します。
特に、水泳やウォーキング、捻る系のエクササイズや運動において、腰椎椎間関節と仙腸関節へ垂直な力が生じます。
胸腰筋膜後葉の表層膜と腰部棘上靭帯との間に部分的な接続が欠けていることが、安定性において不利な点で挙げられます。
しかし、大殿筋と対側広背筋の筋力や協調性が乏しい場合にのみ不利になる傾向があります。
胸腰筋膜後葉は、体幹の回旋と荷重伝達に統合的な役割を果たします。
また、胸腰筋膜後葉は、腰部の動きに関与する複数の構造からのフィードバックを受けるのに理想的な位置であり、深層の安定化筋とより表層筋の両方への広範な筋付着を介して靭帯の緊張を調節しています。
Fasciaは粘弾性特性を有しており、その上にかかるストレスに適応するようにその構造を変化させることができるため、胸腰筋膜後葉は連続的な荷重で硬化していく可能性があります。
まとめ
大殿筋・広背筋・脊柱起立筋・多裂筋のトレーニングは、胸腰筋膜後葉の強化による”force-closure”を増加させます。
※force-closure(フォースクロージャー):筋による骨盤帯安定化機構
胸腰筋膜後葉は、特に体幹の回旋や下位腰椎と仙腸関節の安定化において、脊椎・骨盤帯・下肢への力伝達に重要な役割を果たしています。
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