坐骨神経の走行バリエーション:梨状筋との関係

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神経の走行バリエーションを知った方が良い理由

坐骨神経に限らず、神経の走行には個人差があります。

実際に目の前の患者さん・クライアントの状態を把握することは難しいですが、これを学習し理解しておくことは、相手への説明の時に役立つことと思います。説明の仕方が変わると、相手からの信頼度も上がり、より良い結果が得られやすいと感じます。

また、症状を引き起こしている原因が1つではなく、あらゆる側面から考える習慣をつけておくことで、セラピストの臨床力の向上度合いが変わると確信しています。

いくつかのバリエーションがありますが、最も多いタイプが一般的な解剖学書籍に掲載されていると考えられます。解剖学書籍の中でもそれぞれ違った書き方をしている場合もありますので、気になる方は比較してみると面白いかもしれません。

今回は、神経の中でも一般の方に馴染みのある”坐骨神経”の走行バリエーションをご紹介していきます。

坐骨神経の走行バリエーション

坐骨神経の走行には6つのタイプがあります。

坐骨神経

  1. 梨状筋の下を走行する
  2. 坐骨神経が分断し、梨状筋を貫通・下を通過する
  3. 坐骨神経が分断し、梨状筋の上・下を通過する
  4. 梨状筋を貫通する
  5. 坐骨神経が分断し、梨状筋を貫通・上を通過する
  6. 梨状筋自体が分断しその間を通過する

多くの解剖学書籍には、梨状筋の下を通過するタイプが記載されていることでしょう。

原著にイラストが掲載されていますので、併せてご参照いただければ幸いです。
坐骨神経と梨状筋の関係はこちらのページです

しかし、それ以外に梨状筋の上を通過したり、梨状筋を貫通していることもあります。これは臨床でアプローチをする上で必要最低限の知識だと思います。

上記のタイプの割合は、著者によって若干のバラツキがあります。

BeasonとAnsonは、84%で坐骨神経が梨状筋の下を通過し、12%で2枝に分かれた坐骨神経が梨状筋を貫通する・下通過することを発見した。

Pecinaは、78%で坐骨神経が梨状筋の下を通過し、21%で2枝に分かれた坐骨神経が梨状筋を貫通する・下通過することを発見した。

まとめると、約8割で坐骨神経が梨状筋の下を通過するということです。③〜⑥のタイプは、全て合わせて3〜4%、多く見積もっても約5%程度といったところでしょう。非常に少ない割合ですが、症状が緩解へと向かわない方に関しては、このような病態も考えられるということです。

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上双子筋や小殿筋との関係

『坐骨神経が梨状筋の上や下を通過する』ということは、梨状筋の上下の筋肉も関係するということです。

梨状筋の上が小殿筋、梨状筋の下が上双子筋になります。

股関節深層殿筋群のイラスト

小殿筋は股関節の関節包との関わりもあり、股関節の安定性に関与しています。
また、上双子筋は梨状筋とともに股関節外旋の作用を有しています。

これを踏まえると、梨状筋が関与する仙腸関節の問題や、股関節の機能不全が関与することが考えられます。筋の過緊張状態や硬さが、梨状筋と併さって坐骨神経を圧迫することで、下肢神経症状を引き起こす可能性があります。

まとめ

坐骨神経の走行は、80%が”梨状筋の下”を通過しており、15%程度が”梨状筋の間を貫通”+”梨状筋の下を通過”するバリエーションがあります。

つまり、梨状筋症候群による下肢神経症状を引き起こしやすい、解剖学的特異性を有する方が存在するということです。これは、下肢神経症状がなかなか改善されないケースで疑われることと思います。安直にこの考えに至るのではなく、そのほかに考えられる病態を鑑別・除外した上で疑うと良いでしょう。

この場合、周囲の筋緊張コントロールだけでは状態が改善されないことが考えられますので、坐骨神経の滑走性(Slider:スライダー)や伸張性に対してアプローチすると良いかもしれません。

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参考文献

Deep gluteal space problems: piriformis syndrome, ischiofemoral impingement and sciatic nerve release:Luis Perez Carro, Moises Fernandez Hernando, Luis Cerezal, Ivan Saenz Navarro, Ana Alfonso Fernandez, Alexander Ortiz Castillo,Muscles Ligaments Tendons J, 2016

コメント

  1. […] 坐骨神経の走行バリエーション:梨状筋との関係坐骨神経の走行には個人差・バリエーション・破格があります。約80%では梨状筋の下を通過しますが、その他の場合は梨状筋の間を貫通 […]