足関節後方インピンジメント症候群の病態と原因

病態

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足関節インピンジメント症候群

足関節インピンジメントは、前方(前外側・前内側)と後方(後内側・後外側)の2つの領域のいずれかでのインピンジメントに伴う足関節周囲の痛みとして定義されます。

足関節後方インピンジメントは、足関節底屈最終域においての距腿関節・距骨下関節の後方構造の圧迫によって生じます。

痛みは、骨棘・炎症・瘢痕化・関節過可動性による、さまざまな軟組織構造の問題によって引き起こされます。

この状態は、アスリート(特にサッカー選手や長距離ランナー、バレエダンサー)によく見られます。

サッカーのゴールキック

これは、急激な加速・ジャンプ、および極端な背屈または底屈を必要としたスポーツで引き起こされます。

今回は、足関節インピンジメントのなかでも、後方インピンジメントに焦点を当ててご紹介していきます。

疫学

足関節インピンジメント症候群には、さまざまな病因を伴う広範囲の病状が含まれます。

これらの症候群は一般に、関与する特定の解剖学的領域によって分類され定義されます。

分類

  • 前方
  • 前外側
  • 前内側
  • 後方
  • 後内側
  • 後外側

足関節インピンジメントは、捻挫または繰り返される微細損傷に後発する一般的な症状です。

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症状

症状として、足関節の強制底屈または強制背屈により増加する足関節後面の痛みを有します。

距腿関節後方の関節裂隙の圧痛が生じる可能性があります。

足関節において、底屈の可動域制限が生じ、靭帯の不安定性に伴い軟部組織の肥厚が生じます。

後方インピンジメント

足関節後方インピンジメントは、「ダンサーのかかと」として知られています。
特に、日常的に足関節底屈の動きをするアスリート(バレエダンサー・ジャンプアスリート・キックボクサーなど)に発生しやすい特徴があります。

足関節後方インピンジメントは、足関節の慢性疼痛の原因になりうる可能性が高いです。

骨または軟部組織のインピンジメントが生じ、特に長母趾屈筋の炎症・後方関節包の肥厚・滑膜炎・足関節内反の外傷や捻挫・脛骨の前方剪断力が引き起こす足関節強制底屈・脛骨後面に影響を与える三角骨肥大によって引き起こされる可能性があります。

これらは、三角骨症候群(有痛性三角骨障害)および後脛距圧迫症候群としても知られています。

三角骨は、足関節後方インピンジメント症候群の最も一般的な原因となります。
※三角骨は距骨の後方に存在する過剰骨で、健常者の約10%にあるとされています。無症候性の方も多いため、これがあるからといって痛みが生じるわけでないと考えられます。

足関節後方インピンジメント症候群は、後内側および後外側に分類されますので、それぞれご紹介していきます。

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後内側インピンジメント

慢性的な足関節後内側部痛は、主に後方線維を含む組織の瘢痕によって引き起こされます。

足関節が底屈している状態で内反の外傷が生じると、後方線維組織が圧迫されます。

足関節後内側インピンジメントに関与する構造には、距腿関節後内側の関節包および後脛距部の靭帯線維が含まれます。

距骨と内果の間は、回外の動きによって組織が圧迫されていきます。

足関節回外・回内の動きのイラスト
外力が加わったり圧迫ストレスが継続すると、後脛距靭帯および後内側関節包の線維化や損傷後の肥厚により、距骨内壁と内果後端の間でインピンジメントを引き起こし、コラーゲン性および線維性の半月状損傷の形成と足関節後内側の滑膜炎をもたらします。

症状

  • 底屈・内反での疼痛
  • 底屈・内反での足関節後内側面の圧痛
  • 足関節の可動域制限

※足関節他動底屈・内反で最も圧痛が生じやすいです

後脛骨筋の機能異常に起因する痛みと区別するのに、上記の症状・所見は役に立つと考えられます。

後外側インピンジメント

この損傷は、後距腓靭帯によって引き起こされます。

足関節外側側副靭帯のイラスト

ただし、この靭帯には解剖学的バリエーションが存在し、人口の56%に存在すると言われています。

底屈動作において、後距腓靭帯は挟み込まれ、最終的に断裂してしまいます。

症状

  • 足関節のロッキング
  • 足関節の可動域制限

後距腓靭帯が圧迫されて断裂すると、これが靭帯の肥大につながります。

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まとめ

今回は、足関節後方インピンジメント症候群の症状と原因をご紹介しました。

前方インピンジメント症候群と同様、足関節捻挫が大きく影響してくると考えられます。

前方と後方との違いに関しては、おそらく日常的に行う動きに頻度の差にあると考えられます。
ジャンプ動作や切り返し動作が多く含まれるスポーツ競技では、どちらも生じる可能性があるため、やはり日頃のケアが大切になるでしょう。

こちらの記事では、足関節前方インピンジメント症候群に関してこちらの記事で解説していますので、是非ご参照ください。

参考文献

  1. Robinson P. Impingement syndromes of the ankle. European Radiology [serial online]. December 2007;17(12):3056-3065
  2. van den Bekerom, Michel PJ, and Eric EJ Raven. “The distal fascicle of the anterior inferior tibiofibular ligament as a cause of tibiotalar impingement syndrome: a current concepts review.” Knee Surgery, Sports Traumatology, Arthroscopy 15.4 (2007): 465-471.
  3. Sandro Giannini, Roberto Buda, Massimiliano Mosca, Alessandro Parma and Francesco Di Caprio,Posterior ankle impingement, Foot Ankle Int 2013 34: 459
  4. Paul G. Talusan, MD, Jason Toy, MD, Joshua L. Perez, Matthew D. Milewski, MD, John S. Reach, Jr, MSc, MDAnterior Ankle Impingemeproprexnt: Diagnosis and Treatment: J Am Acad Orthop Surg 2014;22: 333-339

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